ごあいさつ
マイクロ法人など小さい会社の税務を得意としている税理士法人加美税理士事務所の税理士 川畑英之と申します。
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年商2000万円超の事業者は青色申告と白色申告どちらを選ぶべき?違い・メリット・デメリット徹底解説
「確定申告するなら青色と白色のどっちが得か?」
これは多くの事業者様が確定申告の時期に直面する、非常に重要な問いです。特に年商2000万円を超える規模の個人事業主様やマイクロ法人の設立を検討されている方にとって、申告方法の選択は節税対策や資金繰りの最適化に直結します。
日本の税制度では、個人事業主として確定申告を行う場合に「青色申告」と「白色申告」の2種類が用意されています。これらは単なる書類上の違いではなく、控除の有無、経費の扱い、帳簿の負担、さらには将来的な法人化の判断にも影響を及ぼします。
本記事では、「マイクロ法人 税理士」「法人化 税理士」といったキーワードで検索されることが多い事業者様に向けて、青色申告と白色申告の違いを税理士の視点から分かりやすく解説します。特に以下のような点について重点的に取り上げていきます:
- それぞれの制度の節税メリットとデメリット
- 会計ソフト(freee・マネーフォワード)との相性
- 将来的に検討すべき法人化のタイミングと損得ライン
- 税理士との契約形態(顧問契約 or スポット契約)への判断軸
マイクロ法人の設立や個人事業主としての青色申告を迷われている方にとって、最適な選択のヒントとなるよう、実務経験を踏まえながらお伝えしてまいります。
青色申告と白色申告の違いと選択のポイント
青色申告と白色申告の最も大きな違いは、事前の申請手続きの有無、帳簿の記帳方式、そして税制上の優遇の有無にあります。
まず、青色申告を選ぶには、税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。提出期限は開業日から2ヶ月以内またはその年の3月15日までと定められており、この期限を過ぎるとその年は青色申告ができず、白色申告となります。一方、白色申告は開業届さえ提出していれば、事前申請なしで利用可能です。
帳簿の記帳方法も大きく異なります。青色申告では原則として複式簿記を用いた帳簿付けが必要で、損益計算書・貸借対照表を作成して「青色申告決算書」として提出します。対して白色申告は簡易簿記(単式簿記)による記帳で構いません。確定申告時には「収支内訳書」を作成・提出するのみで、手続きは比較的シンプルです。
ただし誤解しがちですが、白色申告であっても売上・経費の記録、領収書の保存といった基本的な記帳義務は存在します。「何もせずに申告できる」というのは過去の話であり、現在では最低限の帳簿管理が求められる点に注意が必要です。
選択のポイントは、事業規模と継続性です。特に年商2000万円を超えるような事業者様であれば、収益が安定しており事業所得として認められる可能性が高いため、青色申告を選ぶことが現実的です。副業や短期収入といった雑所得では青色申告は利用できません。
加えて、青色申告では65万円の特別控除や赤字の繰越控除、30万円未満の資産の一括経費計上など、法人化に匹敵する節税制度も利用できます。これらの特典は、帳簿付けの手間をかけても受ける価値があるものです。
今後、法人化やマイクロ法人の設立も見据える場合には、早い段階から青色申告に慣れておくことが、将来的な顧問契約のスムーズな移行や会計freee・マネーフォワード等のソフトとの連携強化にもつながります。白色申告はあくまでスタートアップ向けの暫定措置と考え、事業の本格化に伴い青色申告へ切り替えるタイミングを見誤らないよう注意しましょう。
青色申告のメリット:65万円控除や経費計上の優遇による節税効果
青色申告には、個人事業主様にとって見逃せない節税メリットが多数存在します。特に、以下の制度は実際の納税額に大きく影響します。
最大65万円の青色申告特別控除
青色申告者が一定の条件を満たすことで、最大65万円の所得控除が受けられます。たとえば、事業所得が300万円の方であれば、65万円控除後の235万円が課税対象となり、所得税・住民税の合計負担が数十万円単位で軽減される可能性があります。
この控除を最大限受けるには、以下の要件を満たす必要があります:
- 複式簿記による記帳
- 青色申告決算書の作成
- e-Tax(電子申告)での提出
条件を満たさない場合でも、10万円の控除が受けられますが、やはり65万円控除の恩恵は大きく、特に年商規模が大きい方ほどその効果は顕著です。
青色事業専従者給与の経費算入
青色申告では、家族への給与(専従者給与)を全額経費として計上できます。例えば、配偶者に毎月10万円の給与を支払う場合、年間で120万円を経費化できます。
白色申告にも「事業専従者控除」はありますが、配偶者なら上限86万円、親族は50万円までと制限があります。青色申告であれば、適正額であれば上限なく給与を経費化できるため、所得分散による節税が実現します。
この制度は、家族経営のマイクロ法人設立を検討している方にも有効です。法人化後の「役員報酬」の設計にもつながる考え方として、青色申告での実践は非常に有用です。
青色申告の節税メリットは、単なる所得控除に留まらず、所得分散・経費の拡張・将来の法人化準備といった多角的な効果をもたらします。節税対策としての「最初の一手」として、ぜひ活用を検討してみてください。
青色申告のさらなる節税効果:貸倒引当金・小規模資産の即時償却・赤字繰越控除
青色申告には、所得控除だけでなく将来リスクや設備投資に備えた節税手段が用意されています。事業の継続性と利益変動への対応という観点からも、以下の特典は非常に実用的です。
貸倒引当金の計上による備えと節税
取引先に対する売掛金の回収不能リスクを見積もって、事前に損金として計上できる「貸倒引当金」は、青色申告者のみ利用可能な制度です。実際に貸倒れが起きていなくても、将来のリスクに備えて経費計上できる点が特徴です。
たとえば、企業間取引や掛取引を行う事業者様では、資金繰りに影響する貸倒リスクが常につきまといます。この制度を活用すれば、回収不能による突発的な利益圧縮を未然に吸収でき、税負担を平準化することが可能です。白色申告ではこのような事前対応ができません。
30万円未満の資産は一括で経費にできる
青色申告では、1点30万円未満の資産(パソコン・カメラ・什器等)を購入した場合、その年に全額経費として計上できます。年間300万円までの上限はあるものの、高価な設備導入時に即時償却できるため、資金繰りや節税の観点で非常に有利です。
例えば、20万円のカメラを購入した際、白色申告であれば原則として5年等の耐用年数に沿って減価償却する必要がありますが、青色申告ならその年の必要経費として一括計上が可能です。これにより、利益が多く出た年に経費を集中させ、税額を抑える戦略が実行できます。
赤字の繰越控除(最大3年)による利益変動の平準化
青色申告者は、事業年度で赤字が出た場合、その損失を翌年以降最大3年間繰り越して黒字と相殺できます。たとえば初年度に-100万円の赤字、2年目に+150万円の黒字が出た場合、課税対象は実質+50万円に抑えられます。
この制度は、新規立ち上げ期や設備投資が重なった年に赤字が出ても、翌年以降の税負担を軽減できるため、事業を長期的に安定運営するうえで心強い制度です。
加えて、要件を満たせば前年分への繰戻し還付も可能となり、赤字分について過去の納税額からの還付も受けられます。
これらの制度は、年商2000万円超の事業者様やマイクロ法人化を検討する個人事業主様にとって、キャッシュフローと税負担の両面で重要な武器となります。単年度での節税に留まらず、数年単位での利益の平準化にも貢献する青色申告は、まさに実務的な節税戦略の中核といえるでしょう。
青色申告のデメリット:手続きの煩雑さと記帳義務の負担
青色申告には大きな節税メリットがある一方で、手間や事務作業の負担がデメリットとして存在します。ここでは、実務上気をつけるべき注意点を税理士の視点から解説いたします。
記帳・申告手続きの煩雑さ
青色申告では、原則として複式簿記での記帳が求められます。仕訳帳や総勘定元帳といった正式な帳簿を日々つける必要があり、決算時には損益計算書と貸借対照表を含む青色申告決算書を作成して、確定申告書と一緒に提出する必要があります。
これにより、白色申告で必要な「収支内訳書」に比べて、提出書類のボリュームも作業工程も大きく増加します。初めて複式簿記に触れる方にとっては、取引の仕訳から数字の整合性確認まで精神的・時間的負担が大きいのが実情です。
承認申請の期限管理が必須
青色申告を利用するには、所轄税務署へ「青色申告承認申請書」を所定の期限までに提出しなければなりません。開業1年目は「開業から2ヶ月以内」、2年目以降は「その年の3月15日まで」が提出期限です。
この期限を過ぎると、その年は白色申告しか選択できなくなるため、せっかくの65万円控除などの節税メリットを受けられなくなります。法人化の手続き時にも似たような「タイミングの見極め」が重要となるため、青色申告の開始時点から期限管理には十分注意が必要です。
これらの負担は確かにデメリットですが、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトの導入によってかなり軽減可能です。また、税理士とスポット契約や顧問契約を結ぶことで、記帳代行や決算書類の作成をプロに任せることもできます。
実際、年商2000万円規模以上の事業者様では時間効率と精度の面から税理士への依頼が一般的です。青色申告を活用することで得られる税制上の恩恵は、多少の手間やコストをかけても十分回収できるだけの価値があります。
会計ソフト活用と税理士依頼による負担軽減
青色申告には帳簿作成や手続きの煩雑さというハードルがありますが、近年ではこれらの負担を大きく軽減できる手段が整っています。ここではクラウド会計ソフトの活用と税理士への依頼という2つのアプローチについて解説します。
freeeやマネーフォワードによる帳簿付けの効率化
青色申告では複式簿記での記帳が求められるため、一定の会計知識(簿記の基本)が必要になります。しかし、現在ではクラウド型の会計ソフト(例:freee、マネーフォワード、やよいの青色申告オンラインなど)が充実しており、初心者でも直感的な操作で記帳が可能です。
例えば、銀行口座やクレジットカードを連携することで明細データが自動で取り込まれ、AIが仕訳候補を提示してくれるなど、手作業での入力を最小限に抑えられる設計になっています。特にfreeeは、マイクロ法人の会計処理やインボイス制度対応にも優れており、法人化を視野に入れた事業者様にも適しています。
税理士に依頼するメリットと契約形態
帳簿の作成や確定申告書の作成に不安がある場合、税理士に依頼することで大幅に業務負担を軽減できます。税理士に依頼する主なメリットは以下のとおりです:
- 記帳・決算・申告の一括対応(経費処理や節税スキームの提案含む)
- 税務署対応(調査時の立会いや指導も可能)
- 電子帳簿保存法やインボイス制度など法改正への対応
- 事業フェーズに応じた法人化のタイミングアドバイス
契約形態は「スポット契約(決算のみ)」と「月次の顧問契約」に分かれます。年商2000万円規模以上の事業者様では、継続的な経営支援が受けられる顧問契約を選ぶ方が多くなっています。顧問契約を結ぶことで、日々の経費処理の相談や役員報酬の設計といった法人化に向けた準備もスムーズに進められます。
税理士報酬というコストは発生しますが、節税額や本業への集中による利益拡大効果を踏まえると、そのリターンは十分見込めます。特に事業規模が拡大傾向にある方は、記帳負担を懸念して青色申告を敬遠するのではなく、専門家やツールを活用して制度を積極的に利用する姿勢が大切です。
白色申告のメリット・デメリット:手続き簡単だが節税効果は限定的
白色申告は、会計や税務に不慣れな方でも比較的始めやすい制度として知られています。記帳方法が簡易で、事前の手続きが不要という点が主なメリットです。
白色申告のメリット
- 事前申請が不要:青色申告に必要な「青色申告承認申請書」の提出が不要で、開業届さえ提出していれば誰でも選択可能です。
- 帳簿の作成が簡単:簡易簿記(単式簿記)での記帳が可能で、家計簿に近い感覚で売上と経費の記録ができるため、経理経験のない方でも始めやすいです。
- 提出書類もシンプル:青色申告決算書ではなく、売上や経費の内訳を記載した「収支内訳書」を作成すれば申告できます。
このような特徴から、白色申告は副業レベルの小規模事業者様や、開業初年度で売上が少ない方にとっては手軽な選択肢となります。
白色申告のデメリット
一方で、白色申告には節税に関する特典が一切ないという大きな欠点があります。
- 青色申告特別控除が使えない:最大65万円の所得控除は青色申告者だけの特典です。白色申告では、所得がそのまま課税対象となるため、税負担が増加します。
- 専従者給与の全額経費化ができない:白色申告では、「事業専従者控除」によって一定額までしか控除できません。家族への給与をフルに経費計上したい場合は青色申告が必須です。
- 赤字の繰越ができない:白色申告では、事業が赤字になってもその損失を翌年以降に繰り越して相殺することができません。これにより、トータルでは利益が出ていなくても黒字年に税金がかかることがあります。
- 小規模資産の一括償却も不可:30万円未満の資産について、その年に全額を経費に落とす特例も利用できません。
帳簿が簡単という点に注目されがちですが、現在では白色申告者にも一定の記帳義務と保存義務があります。freeeやマネーフォワードといったツールの活用を前提にすれば、青色申告の手間はそれほど重くなくなってきているのが現状です。
そのため、白色申告は「開業したばかりで利益がほとんどない方」「一時的な副収入しかない方」向けの選択肢といえます。売上規模が拡大してきたら、できるだけ早く青色申告へ移行することが、長期的な節税のカギとなるでしょう。
白色申告の節税面での限界:控除なし・特例なし・繰越不可
白色申告は手軽で始めやすい制度ですが、節税という観点では明らかに不利な選択です。青色申告で得られる主な特典が全く使えないため、売上や利益が一定以上ある事業者様にとっては、大きな機会損失となります。
青色申告特別控除が使えない
最大65万円の所得控除(または10万円控除)は青色申告者のみに認められる制度です。白色申告では、この控除が一切適用されないため、同じ所得でも納税額に大きな差が生じます。
たとえば年間所得が300万円ある場合、青色申告では65万円を控除し235万円に圧縮できますが、白色申告では300万円そのままが課税対象となります。この差は節税額で言えば数万円から十数万円にも及ぶことがあり、事業規模が大きくなるほどその損失は顕著になります。
経費計上の特例が使えない
白色申告では、以下のような青色申告限定の特例が一切利用できません:
- 青色事業専従者給与(家族への給与全額の経費化)
- 小規模資産(30万円未満)の一括償却
- 貸倒引当金の計上による将来リスクの備え
そのため、たとえば家族に実際に給与を支払っていても、一定額までしか経費として認められず、赤字になってもその損失はその年限りとなります。
赤字の繰越控除ができない
白色申告では、事業が赤字になった場合、その損失を翌年以降の黒字に充てることができません。たとえばある年に設備投資をして赤字が出ても、翌年の黒字からその赤字分を差し引けないため、税負担が不均衡になる可能性があります。
事業は波があるものですが、白色申告では利益の変動に対して税金を調整する手段がないのが大きな弱点です。
これらの点から考えても、白色申告はあくまで利益が出ていない時期や、短期の副業レベルでしか選択する意義がない制度と言えます。帳簿の簡便さだけに目を向けて白色申告を続けていると、本来受けられるはずだった控除・特例による節税効果を完全に取り逃がすことになります。
特に、事業が成長して年商1000万円〜2000万円を超える水準に達している場合、白色申告のままでいることは「高額な税金を自ら選んで支払っている」のと同義です。記帳の手間が不安であれば、会計ソフトや税理士を活用し、できる限り早期に青色申告へ切り替えるべきでしょう。
白色申告が許容されるケース:利益がごく少ない・一時的な副収入の場合
ここまでで白色申告のデメリットを詳しく解説してきましたが、実は特定の条件下では白色申告でも問題ないケースがあります。以下のような状況に当てはまる場合は、あえて青色申告に移行せず、白色申告で済ませるという選択肢もあり得ます。
青色申告特別控除の恩恵が受けられないケース
たとえば年間所得が20〜30万円程度しかなく、そもそも65万円の青色申告特別控除を使い切れない場合があります。このような場合、手間をかけて青色申告を行っても、節税効果が十分に得られない可能性があります。
また、青色申告の承認申請期限を過ぎてしまった年や、開業届だけを提出してすぐに廃業予定がある場合も、無理に青色申告に切り替える必要はありません。
一時的な副収入で継続的な事業でない場合
たとえばフリマアプリでの不定期な売上や、単発の委託案件などによる収入で、事業性が弱く継続予定もない場合には、白色申告でも十分です。このような場合、税務署からも「事業所得」ではなく「雑所得」として扱われる可能性があり、青色申告の適用対象外となります。
ただし、年商2000万円以上の事業者には不向き
一方で、年商2000万円を超えるような事業者様の場合、たとえ経費を差し引いても数百万円単位の利益が発生している可能性が高いため、白色申告のままでいることは非常にもったいない状況です。
仮に青色申告に切り替えた場合、65万円の控除に加えて、家族への給与の経費算入や赤字繰越、資産の即時償却といった多層的な節税メリットを活用できるため、早期の制度変更が極めて有効です。
結論としては、白色申告は一時的・少額収入に対しての簡易的な制度であると認識すべきです。事業が拡大してきた時こそ「節税設計」が必要となり、青色申告への移行を視野に入れるタイミングです。さらに利益が積み重なってきたら、法人化の検討ラインにも入ってきます。
次のステージを見据えた節税戦略の第一歩として、青色申告への切り替えを早めに行っておくことが、後々の手間や税負担を減らす近道です。
年間利益500万円超は法人化検討ライン:青色申告から次のステージへ
青色申告による節税を最大限活用したうえで、さらに利益が積み上がってくると、いよいよ検討すべきなのが法人化(マイクロ法人設立)です。法人化は単なる組織形態の変更ではなく、税負担の構造を抜本的に見直す選択となります。
法人化による節税の分岐点は「年間利益500万円〜800万円超」
個人事業主の場合、所得税は累進課税(最大45%)で、利益が増えるほど税率も上がります。一方、法人税は中小企業であれば所得800万円以下は約15%、それ以上は23%前後と一定で、利益が大きくなるほど法人の方が有利になる構造です。
例えば、年商3000万円・経費差引後の利益が800万円のケースを想定すると、個人のままでは高い税率で課税されますが、法人化により次のような分散が可能になります:
- 法人が適正な役員報酬(たとえば500万円)を支給し、それを経費にする
- 残りの利益300万円に対して法人税が課される
- 役員報酬は給与所得として、各種控除後に個人側で申告
これにより、所得を法人と個人に分散させる節税スキームが実現できるのです。
法人化のメリットは税金以外にも
- 社会保険に加入できる(健康保険・厚生年金)
個人の国保・国年より保障が手厚く、年金の将来受給額も増えます。 - 資産分離が可能:個人資産と法人資産を明確に分けられるため、万一のリスク対策や事業承継にも有利。
- 社会的信用の向上:法人登記により、銀行融資や契約面での信頼度がアップします。
ただし、法人化には固定コストもある
- 設立費用(登録免許税・定款認証費用などで約20万円)
- 毎期の法人住民税均等割(赤字でも最低7万円)
- 決算書作成や税務申告など、事務負担・税理士費用が個人より増加
このように、法人化は「年商ではなく利益規模」で判断するのが基本です。目安は年間利益500万円〜800万円。このラインを超えてくるようであれば、顧問税理士と連携して法人化による節税シミュレーションを行うことをおすすめします。
マイクロ法人の設立においては、取締役の兼務・役員報酬の設計・社会保険加入の可否など、専門的な検討が必要となるため、初期段階からのプロの関与が不可欠です。
青色申告と法人化の比較:税率・経費・社会保険・管理コストの違い
青色申告のままで継続するか、法人化に踏み切るか。この判断をする際には、両者の違いを冷静に比較する必要があります。
税率の構造
- 個人事業主(青色):所得税は5〜45%の累進課税+住民税10%
- 法人:中小法人は所得800万円以下で約15%、超過部分は約23%前後
利益が800万〜1000万円を超えてくると、個人より法人の方が税率面で有利になる構造になります。
経費と控除の扱い
- 個人:青色申告特別控除(65万円)、専従者給与などを経費化可能
- 法人:役員報酬、交際費(一定範囲)、退職金、法人向け保険など柔軟に経費化可能
法人では、「給与として支給して経費化する」「法人保険を活用する」といった多層的な節税が可能になります。
社会保険の違い
- 個人:国保・国年(所得に応じて増額)
- 法人:原則として社会保険(健保・厚年)へ加入が義務
⇒ 保険料は高くなるが、将来の年金額や医療保障が厚くなるメリットも
この点も、扶養の範囲や老後の備えといったライフプランと合わせて検討すべきです。
管理コストと手間
法人化すると、以下のような事務が増加します:
- 毎月の役員報酬の支払い・源泉税の納付
- 決算・法人税申告・税務署対応(電子帳簿保存法対応も重要)
- 株式会社の場合は決算公告義務も発生
これらを総合的に比較した上で、年商2000万円、利益500万円超の水準になっている場合は、まず青色申告をフル活用し、その後の法人化タイミングを慎重に判断するのがベストです。
税理士と相談しながら、freeeなどの会計ソフトを活用しつつ、記帳体制を法人レベルに整えておくことがスムーズな法人移行への布石になります。
まとめ:青色申告は事業の基盤、法人化はその先の選択肢
ここまで、青色申告と白色申告の違いや、法人化を含む税制の選択肢について解説してきました。改めて結論をまとめると以下のとおりです。
青色申告は基本的に選ぶべき制度
- 65万円控除や各種節税特典がある
- 家族給与や赤字繰越など柔軟な税務設計が可能
- freeeやマネーフォワード等との連携により、記帳負担も軽減可能
- 将来的な法人化に向けた準備ステップとしても有効
特に、年商2000万円を超える規模の事業者様や、今後の利益拡大を見据えている方にとっては、青色申告を選ばない理由がありません。制度のメリットを最大限活かすことが、税負担の最適化と資金繰りの健全化につながります。
法人化は利益と将来ビジョンに応じた選択肢
- 年間利益が500万円〜800万円を超えてくる段階で法人化を検討
- 税率の最適化、社会保険、信用力向上といった副次的効果も大きい
- ただし、法人登記・維持コスト・管理負担が発生するため見極めが重要
マイクロ法人を設立して節税・社保対策を講じる方も増えていますが、法人化が「いつでも得」というわけではありません。事業モデル・利益構造・ライフプランによって最適解は異なります。
迷ったときは、マイクロ法人や法人化に強い税理士に相談することが最も確実です。会計freeeやマネーフォワードといった会計ソフトに精通し、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、さらには社会保険・扶養の扱いまで包括的にアドバイスできる専門家の力を借りることで、節税だけでなく将来を見据えた経営判断が可能になります。
税理士法人加美税理士事務所では、個人事業主様の青色申告サポートから、マイクロ法人の設立・法人化に至るまで、一貫した支援体制を整えています。「マイクロ法人 税理士」「法人化 税理士」でお探しの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
青色申告と白色申告のどちらがおすすめか
結論から申し上げると、継続的に利益を上げている事業者様であれば、青色申告一択と言っても過言ではありません。特に年商規模が1000万円、2000万円、さらには3000万円を超えてくると、青色申告の節税効果は非常に大きくなります。
年商・所得規模別の判断基準
- 副業レベル・年商数百万円以下
利益が基礎控除(48万円)に満たないケースでは、青色申告をしても控除を活かしきれない可能性があります。このような場合は白色申告でも大きな問題にはなりません。 - 年商1000万円〜2000万円前後
この水準になると、個人事業としても本格的な規模といえます。65万円控除や各種経費特例を活用できる青色申告を選ばないと、余計な税負担を抱えることになります。 - 年商3000万円以上
事業所得も数百万円〜1000万円以上に達していると想定されます。白色申告のままでは、所得圧縮や損失繰越といった柔軟な節税手段を一切使えず、多額の税負担が発生します。この段階では、青色申告どころか、法人化(マイクロ法人設立)の検討も必要です。
実際の現場でも「青色申告を選ぶ人が圧倒的多数」
freeeやマネーフォワードを導入している事業者の大半は、青色申告を前提とした帳簿設計を行っており、記帳の自動化・簡素化が進んでいる現在では、青色申告の手間は大幅に下がっています。
また、税理士との顧問契約やスポット契約を活用することで、「自分で複式簿記をマスターする必要がある」という心理的ハードルも乗り越えやすくなっています。
今後、法人化を見据えた節税スキームを組んでいく上でも、まずは青色申告のメリットをフル活用できる体制を整えることが先決です。帳簿付けが煩雑だからと白色申告を選ぶよりも、ツールや専門家の力を借りて青色申告に取り組む方が、結果として得られる金銭的・時間的リターンは圧倒的に大きくなります。
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